銭湯帰り、月島の路地で
夏の夜、銭湯の暖簾をくぐって外に出る。
体は火照っていて、髪はまだ少し湿っている。湯気が頭の上から立ちのぼっていくのが、夜の空気の冷たさで分かる。
月島の路地は狭い。アスファルトに、銭湯の灯りが伸びている。
サンダルを引きずる音だけが、自分の歩く速度を教えてくれる。
角を曲がると、提灯の灯る小さな居酒屋がある。中から、誰かの笑い声が漏れていた。
私は中に入らず、そのまま通り過ぎる。
家までの数分間、自分が東京の住人だということを、はっきり感じる時間だ。
二階の窓に、洗濯物が干されている。テレビの青い光が漏れている。誰かの生活が、そこにある。
銭湯帰りの夜は、東京がいちばん静かに見える時間かもしれない。